「道場に来るなんて珍しいな。」
後ろから武田の声。


「石野くんは?」

無意識に聞いていた。


「石野なら、中にいる」


「呼んできて。」

また無意識に口が動く。


「るい、石野は両親を亡くしている。俺も最近知ったんだ。」


「えっ……」


知らなかった。
私が知るはずも無い。
石野くんは自分について多くを語らなかったから。



「変な話して悪かったな。じゃ、呼んでくる」


「待って。今日はいいわ。」

もう、さっきまでの感情は薄らいでいた。


石野くんについてもっと知りたい。

そう強く思った。