もしも君が助けてくれたら

「あ、由良です。すみません、さっきは」

自分の部屋に戻って鈴木さんに電話を掛け直した。

鈴木さんはすぐに電話にでて、ずっと私からの電話を待っていたんだ、と思った。

「えぇ、いいのよ。ところで、さっきの話しの続きなんだけど、夏君だけでもこちらで引き取ろうかと思ってるのよ」

私は携帯電話を握っている手に力を込めました。

「それは、母が引き取ってくれ、と言ってくれたんですか?」

「いいえ。言ってないけどね、やっぱりこのままの状態だったらきっと家庭も苦しいだろうし、いくら前の夫の貯金がたくさんあるって言っても、やっぱりそのうち無くなっちゃうでしょう?だったら、もう先にこっちに来ておいたほうがいいと思うの。ね。うちの夫も承諾してるし、うちの息子も夏君と同い年だけど、すごく楽しみにしてるの。夏君とは仲良くなれると思うのよ」

私は小さく息を吸い込んだ。

何度この話しを持ちかけられただろう。

「夏はどこへも行きません。本人がそう言っています」

すると、電話の向こう側で息を呑む音がした。

「え、でも、ね。やっぱり、そういう家庭よりもこっちの家庭のほうが楽しく暮らせるだろうし・・・、ね?なんなら由良ちゃんも一緒に・・・」

「母を置いてどこかへ逃げるなんて無様な真似、できませんから」

鈴木さんの言葉を強制的に制し、私はハッキリと言った。

その時、部屋に夏が入ってきた。

そして、強引に私の携帯電話を奪う。

「鈴木さん。悪いけど、俺、ずっとこの家に住むつもりだから。だからもう電話掛けてこないで」

声変わりのしていない少し高い声が耳につく。

そして、夏は強制的に電話をブチッた。

思わずため息が出る。

「ほんっと、何してんの・・・」

「あ?しつけぇし。マジ苛つくし。今日、俺の携帯にも掛けてきやがったんだぜ?そんで俺が断ったら次は姉ちゃんの携帯に。呆れるわ」

夏のもっともな意見にうなずくことしか出来ない私は姉として少しダサい気がした。

というか、夏の気が強すぎる、と言ったところだろうか。

学校でどんな姿なのだろうか・・・。

そう思った時、夏が何かプリントを渡してきた。