もしも君が助けてくれたら

[side 輝]

「さて、今日は僕が部活動紹介をするよ。昨日はすまなかったね」

ニコニコと愛想のいい笑みを浮かべている新しい先生を俺は少しだけ見下げた。

俺よりもちょっと小さいのか。

「いえ・・・」

「柊に大体は教えてもらったよね」

「はぁ・・・、まぁ」

「覚えたかな?あ、さすがに早いか」

「いえ・・・、大体は覚えたと・・・」

「そっかそっか。そういえば、前は何部に入ってたの?」

「・・・野球部、ですね」

実のところ、いろいろと掛け持ちをしていた。

だから、どれが本命だったかも分からない。

ただ、覚えているのはどの部活も適当にやっていた。

何がしたかったのかも分からなかったから。

と、運動場に出たとき、激しい叫び声がした。

「おらぁー!!そこ違うっつーの!そのボールは俺に流すんだよ!!!」

視線をそいつにやると・・・。

あれ?

誰だっけ。

だけど、見たことがある。

よくアイツと話しをしている男だった気がする。

俺がその男子をみていたのに気がついたのか、先生がニコニコ笑顔で言ってくれた。

「あぁ、あの男の子か。クラスにいる体育委員の男子だよ。運動が大好きでね。サッカー部でエースをとっていて他校では”情熱の獅子”なんて呼ばれているんだってさ。高田秀君っていうんだ。君とは仲良くしたいって日記に書いてたよ」

へぇ・・・。

でも、確かに見ていればサッカーは上手だった。

ただ、ほんとうに情熱的だ。

サッカー部の隣でやっていたのは野球部だった。

動きは、悪くない。

噂で聞いたことある。

ここの高校の野球部は強くて甲子園まで行くことができるって。

なんでも、エースのピッチャーの球が異常に速いとか。

前の学校は弱かったから見ることができなかったけど、確かに、速い。

「あぁ、あの男の子もね、クラスにいる美化委員でね、几帳面な子だけど野球の才能があるんだよ。植野光輝っていうんだけど、輝君と同じ漢字が使われているんだよ」

正直最後のほうはどうでもよかったが、少し気にはなった。