いつも通り定時に仕事を終え、帰宅する途中だった。


 僕はワナにかかって身動きのとれなくなっている、一羽のツルを見つけた。

「可哀想に…」


 僕は迷わずワナを取り外し、傷ついた脚に応急的ではあるが治療を施した。


「もう捕まるんじゃないよ」


 ツルは元気な様子で空に飛び昇がっていった。

 それを見て、僕は嬉しくなった。


 気分良く家に帰り、先程の事を妻に報告すると、笑って言った。


「まぁ、それはエライわ」

「いやぁ~、そんな褒められる程の事でもないよ」


 少し照れながら僕が答えると妻はつかさず

「そんな事ないわ、きっと少しでも家計のたしになればと、仕掛けていたに違いないわ。
 アナタにも見習って欲しいものね」

「えっ、あ、そっちかぁ‥‥」


 呆れ顔の妻は、僕の行動を真っ向から否定した。

 しまいには、なぜ盗ってこなかったのか、と罵られた。


 とてつもなく切なくなってしまった。


 急に無気力、脱力感に襲われた僕はさっさと布団に入った。


「明日も早い、もう寝よう…」