酒に酔って、男が眠りについた頃。城内では憤りを隠せない者達が、重症を負った一匹の亀を取り囲み話し合いが行われていた。


「見ろ、コレが奴のやり方だ…。正直、私はもう我慢の限界だ。この場で殺ろう」

「賛成だ。間違いなく奴は箱を開けていない。記憶を奪えないなら代わりのモノを奪うまでだ」

「まぁ、待ちなさい。あんな鬼畜でも一度は心を許した男だ」

「し、しかし奴は己の欲に目がくらんで、我々の同志にこれだけの傷を負わせたんですよ」

「無論、報復は与える。ただし、ここに居る間は丁重にもてなせ。それで我々も心おきなく実行できるものだ」

「…承知いたしました。で、その手段とは……」

 男にとって二度目の竜宮城への訪問。宴は三日三晩続いた。

 ほてった顔の男は、これから己の身に起こる不幸などしるよしもなく、心の底から楽しんだ。


 数日後に“若さ”と“故郷”を失うことになるとも知らず。