そう言うと、メイドの少女は奥から鮮やかな模様の重箱のような容器を持ってきた。

 きらびやかな塗装が施されている。さぞかし豪華な土産が入っているに違いない。
 少し申し訳ないなぁ、と思いつつもニヤニヤしている青年に「お帰りのさい、こちらをお持ち下さい」
 箱を手渡し言った。

「これはご丁寧に、えっと…まんじゅうか何かですかね」

 冗談混じりに青年が言った瞬間、辺りの空気は張り詰め、皆々、先程までの笑顔は消え、重々しい雰囲気に。

「??……あ、あれ…? 何か変なこと聞いちゃいましたか」

 焦り、困惑する青年に、宮殿の代表者らしき初老の女性が答えた。

「いえ……コレは“玉手箱”と申しまして、失礼ながら、中には特殊な液体で造られた煙が詰め込まれています」

「け、煙…? なるほど、通りで軽い訳だ。でも、失礼と言われますと……」

「…誠に勝手ながら、あなたには、ココでの記憶を消して頂きたい」

「き、記憶を消しちゃうんですか……」
 玉手箱を持つ青年の手が震えた。

 神妙な面持ちで女性は話し始めた。