「返せぇぇーワシの亀ぇぇ…QがUはゑвなёmぇ―――っ」

 体は痙攣を起こしな がら、眼を血走らせ聞き取る事が不可能な奇声をあげている。
 余りにも興奮しているせいだろう、下腹部からは尿が漏れている。

『なんだコイツ、イカレてる…』そのおぞましい形相に青年は寒気がした。
 強引に腕を振り払うと、老人は崩れ落ちた。
「ゼェ、ゼェ…か、返せ……わし…」
 胸を抑えうずくまり、苦しそうな表情を見せながらも、必死に亀を取り返そうとしといる。
「ほら、言わんこっちゃない、大人しく家で寝てろって」

「さぁ、お前たちももう帰れ!? この亀は俺が預かっておく」

「ちぇっ…」不機嫌そうに帰宅する子供達。一方今だ食い下がる老人。
「まったく、なんて元気だよ」
 老人が立ち上がる前に青年はさっさと亀を安全な場所へ連れて行き、逃してあげた。

「お前もとんだ災難にあっちまったな」苦笑いでつぶやいた。海の中へ泳ぐ亀。

 それでもまだ諦めがつかないのか、老人はソレを追いかけ海へ潜った。

「…バカだなありゃ」
 さすがにここまでくると笑えない、と青年も家へと帰った。