いつも通り仕事を終え、家へ帰る途中だった。海岸沿いを歩いていた青年は異様な光景を見た。

「はなせぇーワシのじゃー」

「何だよこのじじい、オレ達が先に見つけたんだぞぉ!?」

 浜辺で飛び交う罵声。声の主は、棒切れを持ったヤンチャそうな数人の子供達と長髪の白髪頭で、顔中シワだらけの老人。
 しかし、見た目とは裏腹に動きはまるで衰えず。


「止めないか、お前たち!? ほら、アンタも何をそんなに騒いでいるんだ」
 青年は渋々仲裁に入った。興奮状態の治まらない老人とは逆に、なだめていくにつれ子供達は徐々に冷静さを取り戻していった。

「知らねぇよ、オレ達が先にこの亀を見つけたんだ…そしたらこのジジイがいきなり横取りしてきたんだよ、なぁ?」

「そうそう、別に甲羅を取っちゃおーとか、卵を喰っちゃおーとか、ケツに棒突っ込んじゃおーとか考えてた訳じゃないよ」

「ハァ…いいか、むやみに生き物をイジメるんじゃない!!」

 青年が呆れて亀を取り上げるた瞬間、老人は青年に掴みかかり、叫び出した。