そしてウサギ(末)はカメにいい寄った。

「ありがとうございました。僕はこの日のために、生まれた時からありとあらゆる英才教育を受けてきました。
 全てはあなたを打倒するため。そして知りたかった。
 何故彼らはあなたにそれ程こだわったのか?
 勝利の先に何が在るのか?」

「そうですか…では見つかりましたか、その探し物は」

 すがすがしい顔でウサギ(末)は答えた。

「いえ、何も……」

 それどころか敗北、喪失感すら漂っている。

「でしょうね…では私はこれで」


 その後ろ姿を見て、ウサギ(末)は自分達の器の小ささを痛感した。

 試合に勝って、勝負に負けたウサギ(末)。


 それ以来、ウサギがカメにちょっかいをかける事は二度となかった。



 -完-