試合開始の合図が鳴った。


 そして硝煙の匂いも消えないうちに、一瞬にして決着は付いた。


  バァンバァン!!

"ワァァァ―――――ッ"


 ゴールの合図と同時に歓声が鳴り響いた。


 ウサギ(末)は汗を拭い、周りを見渡した。

『カ、カメは…カメは何処だ』


 しかし何処にも見当たらない。

 焦って必死に探すがカメの姿は無い……。


 それもそのはず。カメは今だスタート地点から20cmも進んでいなかったのだから…。



 当然の結果だった。どんな馬鹿が考えても勝負になるはずがなかった。

 むしろ、時速70kmを誇る豪脚のウサギが、カメと徒競走などという、何の面白みもない勝負をガチンコで行っている事じたい恐いことだった。


 ウサギ(末)は思った。『先祖達は何がしたかったんだろう…。一族達は一体自分に何を期待していたんだろう…』


 全く答えの出ないまま、因縁の戦いは幕を閉じた。