「カメさん、初めまして。僕は以前あなたとの死闘に敗れて命を落としたウサギの末裔です。
 突然ですが、失礼を承知で申し上げます。僕と真剣勝負をして頂けませんか」


 マヌケな親子との壮絶な戦いから数十年。カメの前に三度、戦いを挑むウサギが現れた。

「おや、懐かしいセリフですね…いいでしょう、受けて立ちますよ」

「ありがとうございます!! 全力を尽くします」


 先祖の無念を晴らすべく、もう後のない最終戦。
 なりフリ構っていられない崖っぷちのウサギ陣営が選んだ種目は“100m”

 油断も天敵も、オマケに辺り一帯一族総出で取り囲む完全ホームゲーム。

 血戦の地の河川敷には、この伝統の一戦を見逃すまいと、数百匹のウサギが大応援団を引き連れ集まった。

「いてまえコラァ――」「ワレぇ、生きて返すなや――」

 一方何から何まで完全アウェイのカメ。


 興奮状態収まらないギャラリーの異様な雰囲気にも心乱すことなく、静かに精神統一に努めるウサギ(末)。


「位置について‥‥ようい―――」


  バァーン!!


 一族の威信と誇りをかけた、決戦の火蓋は切って落とされた。