もも太郎はすくすくと成長していきました。


 時に両親を不安にさせるくらい、それはそれは尋常じゃない程…通常児の数倍の早さで育っていきました。


 実母の呪いか、はたまた神の力か…。


 しかし、老い先短い老夫婦にはソレは有り難い事でした。

「これで老後の面倒をみてもらえる、しめしめ…」

 思わずニヤけてしまうこともしばしば。



 もも太郎、十五歳の春。ある転機が訪れました。


 突如、京の都に、神出鬼没の『鬼』と呼ばれる極悪集団が出没しだしたのです。

 窃盗、強奪、人身売買を繰り返す盗賊たちに困り果てた朝廷は、全国各地に討伐者を募集しました。

《参加者募る。
 資格―成人男子の強者!!
 成功者には金一封!!》

 目の色を変えて食い付いたのがもも太郎のおばあさんでした。

 ここぞとばかりに、もも太郎にけしかけました。

「もも太郎、今すぐに鬼退治にむかいなさい!?
相撲大会でも、大のおとな達相手に負け知らずのお前なら絶対大丈夫だから」

「ほ、本気ですか…?
一国の大名でさえ手に負えない盗賊を一人で……」

 第一、僕まだ中三じゃないか…。


 嘆くもも太郎でしたが、コレは彼にとってチャンスでもありました。


「いい年して、働きもしないで‥‥」

「昼間っから子供と遊んでばっかで‥‥」


 近所でこんな噂をされていたのをもも太郎は知っていました。


 ようし、見返してやる!!

 もも太郎は決意しました。


「わかりました、僕行ってきます」


 見た目にはすっかり成人していた彼の参加に、誰も疑問を持つ者はいなかった。

 それどころか、大段幕まで掲げられるしまつ。

『もう後戻りは出来ねぇ‥‥』


 金属バットとメリケンサック、それとおばあさんがこしらえてくれた特製きび団子を持って、いざ鬼が島へ向かうもも太郎。