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「えぇ、害者は26歳、男性。この家の主人です」

「凶器は自宅の包丁。死因は出血多量によるショック死ですね」


 現場検証を行っている刑事達は淡々と上司に状況を説明している。


 一方、落ち着かない様子の被疑者へ、実況検分に付いていたベテラン刑事は言った。

「奥さん、よく見て下さいよ? 若い女なんてどこにもいませんでしょ」

 女はまるで上の空。痙攣を起こした身体で、突出した眼球をキョロキョロさせながら、何やらブツブツと呟いている。


 確信したように、呆れ顔で一人の刑事が言った。

「間違いない、こりゃ常用者ですね」


 荒らされた室内からは予想通り、注射器、吸引パイプ、パックに詰め込まれた白い粉、怪しげな乾燥樹脂が次々押収された。


「まったく困ったもんですね…。
  .....
 夫婦揃って」



 身体中をメッタ刺しにされて横たわっているその全裸の遺体の腕には、妻と同じ様な注射痕と、それを隠す様に血まみれの手拭いが巻き付けられていた。


  -完-