市川さんはそんな私にお構い無く目を瞑る…


暫く、沈黙のあと……


市川さんは目を開けてニッコリ笑う……



『もう平気…。』


私はドキドキが止まらなくて…
動けずにいた…



まだ肩に乗せたままの私の手を“ギュッ”と握って、

『ハルちゃんの手…ひんやりしてるから…。さっきちょっと触れたとき、冷たかったから…湿布がわり!もう治ったよ!』
って言ってくれた…。



…でも、それは私を安心させるための強がり…


そんな簡単に治るはずもない…痛そうなアザ……



私は申し訳なくて、どうしたいいかわからなくて…


……泣きそう………。




『もうそんな顔しないで!早く検品しよ!あと少しだし…』


『本当にごめんなさい。』

『どうせなら…謝られるより、お礼言われたいなぁ…。』


…あっ……

忘れてた…………。



『なんてね!』


そう言った市川さんは立ち上がり、私の前を通りすぎる時、“くしゃ”っと頭を撫でて行った。


私は慌てて、市川さんの後ろ姿に向かって、


『ありがとうございました。』


お礼を言った…。