「あっちー! しこったま暑っちいー!」


体も、心も、この頭の中も、あっちいぜ。


脳みそが溶けそうだ。


おさまりそうもない。


「響也のチャリでぶっ飛ばして来たがらよう」


顔と首の汗をごりごり拭いてふうと一息ついたおれを見て、ばあちゃんがにこにこしながら言った。


「腹減ったのが? んだら、ほれ、そごさアンパンあるでろ。みんなして食べれ」


とばあちゃんは戸棚を指さす。


「だっがら、それどごじゃねって言っ……て」


とおれは言葉をごくっと飲み込んだ。


みんな……?


ハッとして振り向くと、縁側先に汗だくの響也と健吾が突っ立ていた。


真っ黒な制服のズボンに、真っ白なワイシャツ。


どっちも丸坊主で、こんがり日に焼けた肌。


「おれの……自転車……返してくれ」


と響也は相変わらずのポーカーフェイスで、


「学校から走って来たんだぞ!」


と健吾は険しい顔で、ふたりとも見事に息を切らしていた。


「ほれ。響也も健吾も、こっちさ来てアンパン食べれ。今、麦茶持って来てやっからな」


ほれ上がれ、とばあちゃんがゆらゆら手招きをすると、ふたりは素直に入って来てちゃぶ台の前に座った。


汗だくが3人揃うと熱気むんむんだ。


頭からドラム缶の水を被ったように、ふたりは汗だくだった。


響也はもともと無口だけど、おしゃべりなはずの健吾も口を開こうとしない。


「どっこいしょっ」


あだだ、あだだ、とばあちゃんは悪い腰を手で押えながら立ち上がり、台所へ向かった。


カツコツ、時計の秒針の音が響く。


「おう、修司」


健吾が向かい側からずいっと手を伸べて来た。


「何?」


「いいもん持ってんじゃんかよ」


お前はジャイアンかよ。


「はあ? 何が」