きゅっ、て


上履きの底を鳴らして





きちんと整頓された机達の間を


息を止めて進む








近づくにつれて


ふわっと香るのは





懐かしい、懐かしい



智の透き通った海のにおい










キラキラの青が


瞼の裏に、蘇る










ぎゅっと拳に力を入れて




智のいる窓際の
アタシの席に



彼の匂いに呑み込まれないように






慎重に足を進めた












「サッカー部、練習してんなぁ…」



「・・・…」



「ぉーい、コラ(笑)なんか言えよ」



「…っ、帰るッ」



「・・・…サッカー部、そろそろ終わるね?練習」



「…ッ」







鞄を抱えて


智に背を向ける








「こーら、無視すんなよ(笑)」



「かえん、なきゃっ」



「誰と帰んの?」






急に低くなった声に



背筋がふるっ、と震えた










「ゆーくんと帰んの?」






・・・…知って、る?







「黙んなよ…(笑)」



「…なんで、悠?」



「なっちゃんが浮気してるっつーから、わざわざ来たのよ?」



「ぅ、浮気って…」



「ねー?もぉ、智クンびっくりで(笑)」





アタシには、分かんない




急に姿を消した智が



アタシに会いに来る理由が分かんない







それ以前に



智の言ってる事が


やっぱり全部冗談に聞こえて






・・・…冗談じゃなきゃ


困るよ…








1年前と同じ



胸がきゅぅ…うって

締め付けられる








「悠くんと、どーゆー関係?」



「…か、彼氏ッ」



「ふーん、そう…」



「っ、なに?」









「んー?…なっちゃんの男は俺じゃねぇの?(笑)」







ほやん、て目尻を下げて


優しい瞳でアタシを見つめる










・・・・・…1年前





アタシを振ったのは


智なのに