君と目が合った瞬間に


あたしは恋に落ちてしまった。



こう・・・なんというか・・・



胸がギューッて苦しくなって、心臓がドキドキうるさくて。



何とも言えない・・・感じたことのない、この温かい気持ち・・・





君と目が合っただけでそんな気持ちになってしまうなんて。



これって、もしかして・・・ヒトメボレってヤツなんじゃ・・・?








事の発端は20分前。



季節は初夏。



校庭の桜の木では、新緑の葉の傍でセミがたくさん鳴いていて少しうるさい。



風は暖かいというより生ぬるくて、梅雨明けの直後のせいか蒸し暑かった。







「暑ーい・・・」



あたしは日直の仕事のため、皆のノートを視聴覚室に置きにいかなくちゃいけなくて。



美緒は先に帰っちゃったし・・・沙耶と真琴は部活で誰も手伝ってなんかくれないし。



「早く帰りたいよ・・・」



ブツブツと文句を言いながら、



積み重なっているクラスメイト全員のノートを運んでいた。