『恋人代行 』  ① 媚薬の口づけ



俺は何事かと…彼女に声を掛けるが返答が無い。

仕方なく、少し声を荒げて彼女の名を呼んだ。


すると、彼女は逆ギレのような顔つきで…


「“葵さん”じゃなくて、“葵”でお願いします。私は“潤くん”って呼んでますよ?」


と、言い返して来た。


いつもの温和な表情と全く違う。

俺……何か気に障ること言ったか?

彼女の表情に気を取られ、ついつい何も言い返せない。



結局、ほとんど会話もせず自宅へ到着した。



彼女は姉貴と何やら会話している。



「潤くん、お夕飯はカレーでいいですか?」

「へ?……あっ、うん」


そっか、さっきのは夕飯の相談だったんだ。

……って、もしかして毎日彼女が作ってるのか?

アシスタントはどうした?



「葵さん……」


俺が“葵さん”と呼んだらギロッと睨まれた。


はぁ……女っって面倒くせぇ。



「葵、毎日作ってんの?」

「はい。タダではお世話になれないので…」


そう言った彼女は、楽しそうに夕食を作り始めた。