俺は何事かと…彼女に声を掛けるが返答が無い。
仕方なく、少し声を荒げて彼女の名を呼んだ。
すると、彼女は逆ギレのような顔つきで…
「“葵さん”じゃなくて、“葵”でお願いします。私は“潤くん”って呼んでますよ?」
と、言い返して来た。
いつもの温和な表情と全く違う。
俺……何か気に障ること言ったか?
彼女の表情に気を取られ、ついつい何も言い返せない。
結局、ほとんど会話もせず自宅へ到着した。
彼女は姉貴と何やら会話している。
「潤くん、お夕飯はカレーでいいですか?」
「へ?……あっ、うん」
そっか、さっきのは夕飯の相談だったんだ。
……って、もしかして毎日彼女が作ってるのか?
アシスタントはどうした?
「葵さん……」
俺が“葵さん”と呼んだらギロッと睨まれた。
はぁ……女っって面倒くせぇ。
「葵、毎日作ってんの?」
「はい。タダではお世話になれないので…」
そう言った彼女は、楽しそうに夕食を作り始めた。



