俺の予想通り、部屋は会場と化していた。
数台のカメラと馬鹿デカいスクリーン。
悪夢が甦る。
あの恐ろしい出来事がフラッシュバックする。
すると、目の前の光景に驚き立ち尽くす葵。
………無理もない。
どう見ても“レストラン”じゃない。
俺だけならともかく、葵まで巻き込むとは
マジであの女……悪魔だろ。
「葵、大丈夫か?」
放心状態の彼女の耳元で呟くと、
ぜんまい仕掛けのからくり人形のように
ぎこちなく振り返る葵。
「ごめんな?姉貴が騙したみたいだ」
「えっ?!」
驚く彼女に今日は
“食事会ではない”と告げると
首を傾げて俺を見上げる。
今日は姉貴の祝賀会らしいと告げると
「なんだぁ、そんな事なら早く行ってくれればいいのにぃ~」
彼女は笑顔で安堵した様子。
もしかしたら、この笑顔が
今日の最後の笑顔になるかもしれない。
そんな彼女の笑顔を黙って見ていた。



