『恋人代行 』  ① 媚薬の口づけ



この日を境に俺らの空気感が少し変化した。



葵は俺を見る度、落ち着かない様子で、

避けてる?と思えば、頬を赤らめたり。

話し掛ければニコッとするのに、

突然“ごめんね”と言い残し、どこかへ消える。



これって……俺を“男”として

意識してるって事でいいんだよな?


まずまずってところか?



姉貴はというと、

小さいメモ帳と鉛筆を肌身離さず持ち歩き、

怪しい眼つきで俺らを見てる。

何がそんなに気になるのか、

不思議でならないが……

姉貴の考えてる事にロクな事が無い。

これだけは断言出来る!!


『さわらぬ神に祟りなし』

姉貴に関わると、

とんでもない事態に巻き込まれるのは目に見えてる。


姉貴の奇怪な行動に、

俺は敢えて気付かぬフリをした。



そして、俺はというと……。


彼女に触れたくて、

無意識に近づき手を伸ばす。


突然触られた彼女は驚くが

“勉強頑張ってんな”

“今日のメシ、旨かった”

と、何かに付けて白々しい言い訳を。