その時
ガララ…
引き戸を引いて入ってきたのは
みゆちゃん先生と、ランドセルを背負ったままのヤツ。
ヤツにいつもの余裕っぽい笑みはない。
みゆちゃん先生はあだ名。
みんなそう呼ぶんだ。
でも…
今日のみゆちゃん先生は、どっちかっていうと
『カワイ先生』って感じ。
みんなも子供ながらに何か重いものを感じて
静かに席に着いた。
教卓の前に立ったカワイ先生は
あー…と言いにくそうに口を開く。
「実は…まだ半年くらいしか一緒に居れなかったんだけど
ーーーくんがお家の事情で引っ越すことになったの。」
ヒッコス…?
その時あたしには全く理解できなかった。
あたしの小さな理解能力を置き去りに
話は進んでいく。
