2人が廊下に走っていった後




少しの沈黙が生じる。


辺りのざわざわした声がよく聞こえる。




「…行っちゃたね…」




恵水がようやく口を開いた。


なぎっちゃん達に用事ある人の相手なんてどーするっていうのよーっ!

ついオッケーとか言っちゃたけど!




「なぁ。後藤サン。」



へ!?


いきなり名前を呼ばれて、恵水が少し戸惑う。


えっと~…


なんか知ってるんだけど誰だっけ?


さ…さ…何とかさん?



「えっと~ごめんなさい…誰?」


聞くと関西弁の少女は切れ長の目を見開いて

メガネの奥から

少し背の高い恵水を覗き込んだ。


ウチのこと知らんの?って言わんばかりに…


ごめんなさい!知らないの~!




「海星小の情報屋・聡江緑香(さとえりょくか)や。


通称・ミドリで通ってる。」




みど…あぁ!!


あの恋バナ大好き情報屋さん!


恵水はすぐに思い当たった。



「ミドリちゃん!

同じクラスか。

よろしくね~。」



すぐさま和やかな空気を醸し出す恵水の笑顔。