「おはよ、えみちい♪」
「さっ…桜あ!?」
明くる日、桜の髪がバッサリ切られていた。
「ありがちな…」
巧が呆れ困ったように、目を細める。
「もう必要なくなったから」
あ、そうか。
席につく桜を、龍は驚いたように見つめていた。
その瞳には悲しい光。
「どういう意味?」
「龍が初めて桜を褒めたの、髪のことなんだよ」
ちらっと聞いたことがあった。
まだふたりが付き合う前、初めて交わした言葉。
『髪、長いな』
その一言を龍が言っただけなんだけど。
それでも、それは桜には特別な一言だったはずで。
どうしようもないのかな、本当に。
何も出来ない自分に苛立ちばかりが募っていく。

