顔色すら変えずに、陸ちゃんは言った。
その会話の内容が聞こえたのは、そばにいたあたし、桜、龍、そして海くんだけ。
「・・・1年前、覚えてるでしょ?」
陸ちゃんの崩れない笑顔。
あたしは怖くて思わず震えた。
桜がそんなあたしに気づいて、黙って手を握ってくれる。
「好きって言ったでしょう?」
キャラメル色の髪を指先で弄びながら、巧を見つめている。
巧は陸ちゃんを黙って見遣った。
そういうときの巧は相手の話を聞きながら、本気で怒っているとき。
・・・好きって言ったの?
あたしに『好きだ』って言ったみたいに?
その唇で、陸ちゃんとも・・・
次の瞬間、もっとも残酷な言葉を聞いた。
「あたしの初めて、唇と体で捧げたから。巧はあたしのもの、あたしは巧のものだよ」

