「失礼いたします」


ネクタイのよじれを直し、二回ノックしたあとで、校長の武田洋平が理事長室に入った。


理事長の里中は大理石のテーブルにファッション誌を広げ、ほくそ笑んでいる。


ファッション誌は一冊や二冊ではなかった。


山のように、うず高く積まれていた。


今度はどんなブランド品を買うか、一人ディスカッションに余念がないのだ。


手にはいかにも値の張りそうな、血統書付きのシャムネコが抱えられていた。


氷室のブレイクにより、彼女はあっという間に勝ち組の仲間入りを果たしたのだ。


生徒の親は金持ちばかり。


そのため、寄付金が毎月ガッポガッポ入ってくるのである。


この女、ますます化粧が濃くなったな。


バカ高い服に身を包んだところで中身が伴わなきゃ意味がないんだよ。


まったく、いい気なもんだぜ。


その言葉を武田はグッと飲み込んだ。