月越ほたるは放課後の廊下を小走りで駆けていた。


平均より少し背は低く、童顔のため実年齢よりも幼く見える。


卵型の小さな輪郭の中に、黒目がちの瞳、形の良い鼻、引き締まった口元がバランス良く並ぶ。


栗色がかった長い髪は後ろで束ねられ、走るリズムに合わせて無邪気に揺れた。


桃百合学園の二年生だ。


学校での彼女は―


目立つタイプではないが、地味というわけじゃない。


成績は優れてはいないが、劣ってるわけでもない。


友達は多すぎず少なすぎず。


つまり、どこにでもいるような、平均的な女の子といえた。


「おーい!
月越くーん」


後ろから呼び止められ、ほたるは立ち止まる。


小動物のようなきびきびとした動きで、くるりと振り返った。


その動きに合わせて、髪の毛が揺れる。


振り向いた途端、ほたるの心臓が腕白なちびっこのように暴れ出した。


脈拍が一気に跳ね上がった。