ハッキリ言って、俺は女に名前で呼ばれるのが嫌いだ。

鼻にかかった甘ったるい声で、「さとるぅ~」なんて呼ばれるとゾッとする。

だから今まで付き合ったどんな女にも、決して名前では呼ばせなかった。

俺が名前で呼ばれることを嫌っていることは、学校内では知らないものはいないほど有名な話だ。

もちろん俺の知らないところで、そう呼ばれていることくらいは知っているが、面と向かって『暁』と呼ぶ女は一人としていない。

俺を『暁』と呼ぶのは、唯一人…

4つ年下の愛しい従妹。杏だけ……

杏の優しい声で名前を呼ばれると、心が解けるように癒される…


あの感覚は彼女以外ではあり得ない。


だから…絶対に他の女には呼ばせない。


それは永遠に変わらない…



……はずだった。



あの日までは…