それからしばらく、野球の事を教えてもらった。
本で学ぶより、人から学ぶほうが早い。

「満塁って分かる?」

「…満塁ホームランとか言うよね?意味は分からないけど…」

「満塁ってのは……」


淡々と翔太の説明が始まる。
甲子園のビデオを見たり、図で説明したり。

「………そうだ。ちょっと待って」

何やらビデオの棚をゴソゴソ。
そこには、"全日本高校野球2008"と表記されていた。

「これって…」

「絢斗がピッチャーを努めてた頃の甲子園。」


複雑な気持ちになった。
あの上原がエースとして滝高にいたことを信じきれていなかった。


「超格好いいから。」


ビデオがセットされ、開会式が始まる。
そこには、上原の姿がはっきりと写っていた。


「…ー正々堂々と全力でプレーすることを誓います」


試合が始まり、1回表。


「ピッチャー、上原絢斗君。なんと1年生でのピッチャーです。素晴らしいですね。」


そこには、坊主で日に焼けている上原がいた。
真剣な眼差しでボールを投げる。


結局、上原の集中力と心理力で3回までかなりリードをして、

桜高 1 ー 5 滝高


「…格好いいね…」

無意識にそう思った。