一限目が終わり、次は移動教室。
「次なにー?」
呑気な紗香が私に問いただす。
「体育だよ!早く!」
紗香を焦らし、気持ちだけ前に進む。
「一分遅刻だな。どうしよっかな…」
「先生!すっごく真面目に走るから。いつもより良いタイム出すから!罰はなしで!」
必死に先生を説得する紗香。
それをただただ見てるだけの私。
「先生、格好良いんだから!お願い!」
「はいはい。イエローカードな。次はレッドカードだ。」
…………………単純。
格好いいなんて、縁も所縁もない先生。
まさか信じるとは。バカだ、この先生。
「やっぱり、先生イケメン!!ジャニーズなんか夢じゃないよ!」
「俺、昔ジャニーズのオーディション受けた事あるんだよ!それでな…」
ここからはずっと先生の自慢話。
それも女子が掻き立てるから調子に乗るし。
おかげで授業も残り半分。
「先生ー、早く走ろうぜ。」
「……お、おう。」
………バカ…。
翔太のせいで体育が再開する。

