「先輩はいつもそうでした。騙されてるの解ってたのにたけのお遊びに付き合って、ぼろぼろになって。たけのせいで死にそうになっても笑ってましたよね、貼りつけたような痛々しい顔で」




拘束を緩め、あたしを放す。
まるで蝶を大空に返すかのように。




「あの頃から先輩に心から微笑って欲しいって願ってました。先輩は俺にいつも優しくしてくれて、一度だって弱音吐かなかった。たけが殺された時、俺が警察に通報して救急車呼んだんです。あの時たけがなんて言ったか知ってます?」




口は開いてくれないから頭を振る。
あたしはたけが愛してくれてたなんてそんな妄想は思わない。