「まだかな、ベンチ。」
昨日はずっと部屋にいたからさすがに疲れる。
もう3時間くらいは歩いたはずだ。
「きっともうすぐだよ。」
ちびちゃんに励まされ、また歩き続ける。
「チビちゃんは前のいた世界に帰りたい?」
聞いてはいけないことかもしれないけど
とてもとても気になって聞いてしまった。
「お母さんに会いたい。
仲間は死んでしまったやつが多いけど
まだきっと生きている友達も多い。」
「死んでしまったって…。どうして?」
「カタツムリは葉っぱの上にいないと
人間の自転車に踏み潰されたりするんだ。」
…。それは…。悲しい…。
「そう…なんだ。」
「お母さんも死んでなければ良いけど…。」
小さな小さな声で言う。
私は涙をこらえながら言った。
「一緒に帰れる出口を探そう。」
「うん。ありがとう。」

