「私は・・・人間で・・・
なぜかこの森に迷い込んでしまって
それで・・・あの・・・」



怖くてうまく話せない。


「泊まるところもなくて・・・。」



巨大赤アリは鋭い目つきで私をにらむ。
迫力が最強だ。


ふと、ベンチとアリの会を開いていた
アリの言葉を思い出した。


__機嫌をとらなければかみ殺される___

__褒めまくれば泊めてくれるさ__





・・・いちかばちか・・・





「あのっ!とてもすばらしいです!
このような素敵なおアリ様みたこと・・・
ございません!!」



沈黙が続く。
にらんでいた鋭い目つきが
やわらかいものに変わる。


「いいだろう。一晩ここに泊まりなさい。
ただし、アリを一匹も踏まないこと。
もし誤ってでも踏んだ場合、
お前をかみ殺す。」



かみ殺す・・・
ベンチに言われたときは
手で払えばいいと思っていた。
でもここまで巨大だと
振り払われるのは私のほうみたいだ。


「わかりました・・・」


にらまれる。


「ありがとうございました。
とても優しい方ですね。」


「私の隣の部屋をつかうといい。」



巨大赤アリは満足気味に
部屋へ戻っていった。