帰り道、廊下を歩いていると、ふいに鈴原が話しかけてきた。

「あのさ…ありがとう…ね。助かっちゃった…」

俯いたまま、か細く…

別に俺はなにもしていないし、お礼を言われるようなことはしていない。

「別に俺はなにもしてないけど…」

俺が頬をかきながら言うと、突然鈴原がかおをあげ俺を真っ直ぐ見た。

「ううん!!!!大したことあるよ!!!水野がいなかったら、私今頃独りで泣いてたよ…本当にありがとう!!!!」

いつもなら、絶対に俺に向けることのない笑顔でこう言ったんだ。

そんな笑顔を見ていると、遠い昔の事を思い出す。

俺の大好きなあの子を…