どれほどの時間、私は戦っただろうか?


「ハァ……ハァ……ハァ……」


私は、邪神を殺した。


聖剣で、邪神の心臓を貫いて。


それで、全部終わった。


私の使命が、終わった。


これで私は、解放された。


帰ろう。


そして、帰ったら、彼と………。


なのに、


「ハァ、ハァ……ハァ……ハァ……う、ぁっ………」


なんで、私の胸には、邪神の魔剣が、深々と突き刺さっているの?


「ぅ………ぁ」


足が、ぐらついて、そのまま倒れた。


「ハァ……ハァ……」


その拍子に、魔剣が、私の胸から抜け、ドッと、血が、溢れだす。


胸が、焼ける。


痛くて、苦しい。


血が、流れる。


止まってほしいのに、止まらない。


体から、熱がなくなる。


寒い。


とても、寒い。


体が、思うように動かない。


力が、入らない。


景色が、霞む。


何もかもが、ぼやけて見える。


「ハァ…………ハァ…………」


もう、痛いのか、寒いのか、よくわからない。


「………ハァ………ハァ」


かわりに、とても疲れた……。


それに、なんだか、酷く眠い。


「ハァ……ハァ…………」


……駄目、帰らないと。


「や…………く………」


……約束したじゃないか。


うん、約束した。


……帰ろう。


うん、帰るよ。


今、帰るよ。


「ぁ…………がはっ」


なのに、なんで動いてくれないんだろう。


なんで私は、こんなところで血を吐いて、血にまみれているんだろう。


……汚い。


洗い流したい。


……こんな私、見せたくない。


……見られたくない。


嫌われちゃうかもしれない。


「ハァ…………ハァ…………」


ねえ、リオン。


私、疲れた。


だから、少し、休んでも、いいよね?


「ハァ………ハァ……き、だよ…………ン」


そして私は、目を閉じた。


最後に思ったのは、


……彼が、こんな姿の私を見ても、嫌いになりませんように――――