ー…。
真っ暗なこの空間に自由など無い
日も影も無いそんな暗闇の中に1つだけ自ら光る物があった
赤いベロアの布の周りに綺麗に縁取られた金の装飾
ニスでてかった木目調の足にも品がある
それはまるで高貴な者が座る貴族の椅子
何故そんな物がこんな暗闇に覆われた世界に光を放っているのだろうかーー
「…何か面白い事は無いのか。暇でならんぞ…」
突然響き渡る女性の声
しかしその姿は何処にあるかは見えないままだ
『そう焦ずとも次期に見つかりましょうぞ。我が主よ。』
そして図太いこの世の者では無い声が後を追う
それは悪に満ちた様な…感情が感じられない声だ…
「お前のその言葉はあてにならん。この椅子にも飽きが来た。」
『【あの世界】にも少し不穏な空気を感じておる故に、主が向かわれても暇つぶしにはなるのではないか??』
「無用だ。例えあの世に何かがあろとも…助けてやる義理がどこにあると言うのだ。」
スゥー…。
何もなかった椅子の前にユラユラと揺れる何かが現れた
少しずつ色付いていくその物体は肘置きにふてぶてしく肘を置き
露わになるその姿は何処となく怒りを感じる
腰の辺りまで伸びた金色の髪
不貞腐(ふてくさ)れたその顔に、瞳は少し赤黒く見える
右目のこめかみから何か入り組んだ記号みたいな絵が彫られていた
黒く踝(くるぶし)まである袖の無いハイネックのドレスは総レースで作られた豪華な物
赤く高いヒールを履き、足を組むと
深いスリットの入ったドレスは艶かしい足を見せたー…。
生気の無いその瞳を指摘する者は誰も居ない
ここは彼女だけの世界だ
暗く光の刺さない空間
何処までも続く闇に居座る彼女
孤独が漂うこの暗闇の中
彼女は体無き者と会話を続けたー…。
