ヤミが‥‥‥あたしの前を去る?


ドクン‥‥‥‥‥っ


あたしの心臓が大きく跳ねた。


言い知れぬ不安があたしを飲み込む。


ヤミにすべてを聴き終わった時、いつの間にか繋いでいた手が解けていることに気がついた。


あたしは、本当の記憶に偽りの記憶を重ねて生きてきた。


ヤミは偽りの記憶を守るために、あたしの手を握ってくれた。


ヨウはあたしの本当の思い出を守るために、笑ってくれた。


じゃあ、シンは?


ゆっくりと視線をシンに向けた。


そこに‥‥‥‥‥あたしの知っているシンはいなかった。


いつも、気だるそうに、この世界そのものを嫌うような目つきだったシン。