平日の午後なので、あまり人はいない。



建物をずっと見ていると…


「彼方、中入るぞ」


雄大さんが優しく笑っていた。


「ほら」


そう言って差し出されたのは雄大さんの左手。


少し迷ったけど、自分の右手と繋いだ。


そして、いよいよ中に入った。




入ってすぐに受け付けがあった。


あ…私…お金ないかも…


「大人二人」


受け付けの女の人に向かって雄大さんが言った。


「あの…」


「どうした?」


ちょっと言いにくい…

「私…お金が…」


そう言うと“はっ?”というような顔をされた。


「私…お金なくて…」

もう一度言うと、


「だから?」


そう返ってきた。


「だから…私…」


「彼方の分は俺が払う。心配するな」