その姿を見た瞬間…私の身体は反対方向に走り出した。


「彼方!」


後ろから名前を呼ばれてる。

けど、私の身体は止まろうとしない。


「彼方!待ってくれ!」


阪本さんが私の肩を掴んだ。


「阪本さん…」


「彼方…さっきは悪かった。」


「…離してください」

「彼方、話を聞いてくれ」


「離してください…」

「彼方…」


「殴られるのが怖いんです!」


さっきゴミ箱を阪本さんが蹴った瞬間、昔の思い出がフラッシュバックされた。


泣いても、喚いても、謝っても…

私を殴り続けたお母さんを。



「殴る…?」


「昨日話したことは、私の全部じゃないんです。」


虐待を受けてたなんて、言いたくなかった。

言ってしまったら、お母さんに虐待されてたんだって…

認めることになるから。