早く逃げなきゃ。


私は勢い良く扉に向かって走り出した。


こんな所で死にたくない…。


でも、私の考えは甘かった。


パシッ


私を押さえていた男に手首を掴まれた。


「どこに行く気だ」


「ごめんなさい…必ず、働いて返しますから。」


私は必死に頭をさげた。
涙を流しながら。


すると…


「…泣くな…」

か細い声が聞こえた。
顔を上げると男の人は切ない表情をしていた。

そして、言った。


「頼むから、泣かないでくれ。

俺から離れていかないでくれ。」