…雄大さん…
雄大さんの目から静かに涙が流れた。
「目の前でお母さんを殺された時…
俺は…
俺は何もできなかった。
お母さんに駆け寄ることも…相手の組に向かって行くことも…
そんな自分が…今でも憎い…
そして…お母さんの死を悲しまなかった親父も…」
雄大さんの握りしめる手に力がこもった。
「死んだお母さんを見ても…親父は…戦いを止めなかった。
むしろ…清々しい顔をしてた。
今でも…あの時の親父の笑った顔は忘れない。
お母さんを…見下した目で見たんだ。
5歳の俺でも分かった。
親父は…お母さんが邪魔だったんだ。
お母さんが死んでも…涙一つ流さなかった。
そんな親父が…今でも…怖いんだ。
また、大切な何かを失いそうで…」

