光のもとでⅠ

 エレベーターホールから少し離れたところにある両開きのドアは相変わらず重厚感たっぷりだ。そのドアを澤村さんが慣れた調子でノックする。
「翠葉お嬢様をお連れいたしました」
 中から返事はなく、澤村さんがドアを開けると大きなデスクに向かって静さんが仕事をしていた。
 その部屋に入るのは私ひとりで、澤村さんは部屋に入ることなくドアを閉めた。
「よく来たね。でも、今日は何か用事があるのかな?」
「静さん、ハッピーバレンタインという言葉を知っていますか?」
「いや……」
「私も今日友達に教えてもらったのですが、どうやら『メリークリスマス』と同義らしいです。ですので……ハッピーバレンタイン!」
 言って、最後のひとつを静さんに差し出した。