「澤村さん、オーナーって今国内にいるんですか?」
「グッドタイミングだ。今は会長室で決済書に目を通しているだろう。あと一時間もすればホテルを出てしまうところだった」
「会えますか?」
「翠葉お嬢様でしたら大丈夫かとは思いますが、念のために確認を入れましょう」
 澤村さんはカウンター内の電話から内線をかけると、しばらくして受話器を置いた。
「大丈夫とのことです。ただし、会長室ですからね。唯は入れません」
「へーへー……俺、自分の部屋にいるから行っといで」
「うん、ありがとう。そう時間はかからないと思うの」
「わかった」
 そんなやり取りをしてから、私は澤村さんに案内されて静さんのいる四十一階へと向かった。