業務用オーブンを借りなければ、ここまでたくさんのお菓子を用意することはできなかっただろう。
 本当に、どれだけお礼を言っても足りないくらい。なのに、そのお礼がその場で作っていたものなんて……ちょっと気が引ける。
「でも……気持ち、だよね?」
 大切なのは気持ち……。そう思って心を落ち着けた。

 お昼ご飯を食べてるときも、自室に篭って何をしているのかはとくに訊かれなかった。
 もしかしたら、日にちが日にちだからプレゼントの準備をしていることはバレバレなのかもしれない。それでも、プレゼントするまでは見られたくなかったの。
 時間までは蒼兄のマフラーを編み、二時数分前にゲストルームを出て一階の調理場に下りた。
 調理室で待っていてくれた七倉さんが満足そうに、
「粗熱が取れましたので、もう切り分けられます」