「では、手を洗ってから生地を天板に広げていきましょう。
「はいっ!」
 生地を天板に広げ、全体的にフォークを差して穴を開ける。そのあと、オーブンに入れて二十分ほど焼く。
 その間にクッキー生地に乗せるアーモンド生地を作った。
「焼き上がりまでにまだ少し時間がありますので、昨日焼いたコーヒークランブルケーキの切り分け作業をいたしましょう」
 私は誘導されるままに七倉さんの手順に従った。
 普段家ではだいたいこのくらい……という目分量で切っていたけれども、ケーキにはすでにガイドとなる線が印つけられていて、私はそのガイドに沿って包丁を入れるだけだった。そのおかげで線が曲がることはなくきれいな長方形に切り分けることができた。
「きれい……」
「味見、されてみますか?」
「……あの、私、カフェインが摂れないので……。七倉さん、私の代わりに味見していただけますか?」
「私でよろしければ」
 七倉さんは端の少し崩れている部分を一欠けら口にした。
 するとにこりと笑ってくれる。