見たこともない大きなボウルがいくつか、その中に材料が入れられていた。そして、調理台の一番端に大きなミキサーと見たことのない機械が置いてある。
「さすがにこの分量ですからね。すべて手作業でやるとなると腕に相当な負担がかかります。下手したら腱鞘炎になってしまいますので、使えるものは使う方針で……捏ね機とミキサーを使いますがよろしいですか?」
「とても便利な機械があるのですね……」
「えぇ、パンの生地を捏ねることもできます」
 私は初めて見る大きなミキサーと捏ね機に驚いていた。
「あの……ひとつだけは木ベラや泡だて器を使って作ってもいいですか?」
 七倉さんは不思議そうな顔をしたけれど、
「ではそのようにいたしましょう」
 すぐに了承してくれた。
 どうしても……ツカサに作るものは機械に頼らず自分の手で作りたかったのだ。