「唯兄、ちょっと待って。さすがに四本は編めないっ」
「じゃ、家族の編まずに司っちの編みなさい」
「それは嫌」
「なんで」
「だって……うちの年中行事だもの」
 答えると、肩をカックリと落として落胆された。
「でもさ、俺たちに編んで司っちに編まなかったら司っちぐれると……かないか」
「うん。そんなことでぐれたりはしないと思う」
 唯兄は頭を抱えて、「う゛ーーーん」と悩んでいたけれど、最後には「もういいやっ」と投げた。そして、悩んでいた二種類の毛糸も放り、
「俺、あんちゃんたちと同じ毛糸のコレ。コレがいい」
 唯兄は黒い毛糸に白いモヘヤが絡んだ毛糸を手に取った。
 その毛糸を見て思う。
「ねぇ、唯兄……」
「ん?」
「編んだら……編んだら喜んでくれるかな?」
 誰が、とは言わなくても唯兄ならわかってくれる。そう思って名前は口にしなかった。