藤倉市街まで来ると、唯兄は迷わずウィステリアホテルの駐車場に車を停めた。そして、ポケットからマスクを取り出し、
「風邪もらったら大変。今、インフルエンザシーズンだからね。ほら、つける」
 唯兄は自分と私の分のマスクを用意してくれていた。
「ありがとう」
「でもさ……ふたり揃ってマスクしてると微妙に怪しいよね?」
 私たちはクスクス笑いながら車を降り、手をつないで藤倉の駅ビルへと向かった。