「それはたくさんですね」
「はい……数えたら、七十三人もいて……」
「それはそれは……。ぜひこちらのオーブンをお使いください。クッキーでしたら六枚を一気に焼くことができますし、コーヒークランブルケーキも同様です。一度に焼ける分、家庭用のオーブンよりも時間短縮が図れます」
「……すみません、お言葉に甘えさせてください」
 ペコリと頭を下げると、
「私どもにできることでしたらなんなりと仰ってください。喜んでお手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます」
「では、タイムスケジュールを作りましょうか」
「はい」
 七倉さんはカフェラウンジへと私を案内し、真っ白な紙にシフォンケーキ、フロランタン、コーヒークランブルケーキと書き、その隣に誰にどれをあげるのか、
「必要個数を把握するためにも、誰に何を贈るのかご記入いただけますか?」
「……私、正直たくさん作らなくちゃいけないから、と思って家族にはシフォンケーキを作ることにしたんですけど――あのオーブンだったらたくさん焼けますよね?」
「そうですねぇ……。全員に配るとしても、一度焼けば六枚ですから、それを切り分ければ十分足りますね」