「すべてご用意できます。業務用サイズで買い付けておりますので、グラム単位でご用意できますが、グラム数などはおわかりでしょうか?」
「一度ゲストルームに帰って確認してからでも大丈夫でしょうか?」
「かまいません。たくさんお作りになられるようでしたら、私どもが普段使っている業務用オーブンをお貸しいたします」
「……あの、業務用オーブンってどのくらい大きいのでしょう」
「ご覧になられたほうが早いですね」
 私は七倉さんのあとについて調理室へ入った。
 そこには、業務用冷蔵庫よりも大きな四角いオーブンが置かれている。
「パン屋さんみたい……」
「えぇ。実際に、焼きたてのパンを朝食に召し上がりたいと仰るご入居者様の要望にお答えするために設置されています。お嬢様もいかがですか?」
 それは嬉しいけれども、今はお菓子作りのほうが優先。
「お作りになられるものはフロランタンやコーヒークッキーかと存じますが……」
「ひとつはシフォンケーキ、ほかにフロランタンとコーヒークランブルケーキを作ろうと思っていて……」