今日は午後が丸ごと開いているから、ゲストルームに帰れば生地作りはできるだろう。
 いっそのこと、今日毛糸を買いに行こうか……。
「ラッピング用品も用意しなくちゃいけないし……」
 ブツブツと呟きながら歩くこと十五分、いつもより数分早くマンションに着いた。
「気持ちが急いていると足も早くなるのかな?」

 コンシェルジュカウンターに立っていたのは七倉さん。私は思わず駆け寄る。
「おかえりなさいませ」
「ただいま戻りました。あのっ……」
「なんでしょう」
 にこりと笑顔を返された。
「お菓子作りに必要な材料の在庫はありますか?」
「えぇ、この時期はこちらでご注文される方もいらっしゃいますので、過分にございます。ご入用の材料はおわかりですか?」
「小麦粉とスライスアーモンド、アーモンドパウダー、インスタントコーヒー、ハチミツ、バター、卵と……」
「生クリームとお砂糖、でしょうか?」
「はいっ」